「既成の文学の枠組みから外れた作品を期待します」という既成の文句を繰り返す既成の文学賞、私はそんなものに飽き飽きしました。
既成の物差しで測られる、既成の世界での評価に、私は飽き飽きしました。
小説を書いて文学賞に応募しようとする営み、それ自体が、私は、既成の枠組みの中にあると考えています。私は、今まで小説なんて書いたことのないような人たちにこそ、小説(あるいは小説のような何か)を書いてほしいと思います。
それは、どこかで呟かれて、消えてしまう言葉、しかし、この歌舞伎町文学賞によって、拾い上げられ世に出る言葉であればいいなと、私は思っています。
たとえそれが、世の人たちが顔をしかめ、鼻をつまみ、目をふさぎたいようなものであっても、私は、あなたの才能を信じます。
私は、大手の出版社ではありません、権威でもありません、お金も全然、ありません。(トホホ。)だから、私たちが拾い上げたあなたの作品が本になり、世に出ることを保証はできません。(いえ、きっと出ないでしょう。むしろ、あなたが世に出る第一歩として、汚点としてあなたの人生に残るかもしれません。その時は、ごめんなさい。でも、おめでとう。)
この賞が、本当なら消えてしまうあなたの素敵な言葉が、世に出て、少しでも広まり、みんなの心を動かす、その後押しになれればいいなと、私は思っています。あるいは、みんなではなくても、誰かの心を動かせばいいなと、私は思います。(そしてまた、良い方向にしろ、悪い方向にしろ、誰かの心を動かす言葉は、素敵な言葉だと、私は思います。)
本当なら小説なんて書かないで一生を終えるかもしれないあなたに、この文章が届くことを願っています。
小説を書くなんて思いもしなかったあなたに、この文章が届くことを願っています。
そして願わくば、この賞がなければ、小説を書くこともなかったはずのあなたに、小説(あるいは小説のような何か)を書いてほしいと思っています。
この文章を書いている私(主催者である私)は、応募されたすべての文章に目を通します。あなたの作品に出会えることを、あなたに出会えることを、楽しみにしています。